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主婦の友社

「プラスワンリビング」

3月7日発売号

「アンティークシルバー

の思い出」


銀器の歴史に秘められた
人間ドラマを語る連載11回

今回の主人公は

ロンドンにある百貨店

「リバティ」の創業者
レイゼンビー・リバティー

日本に旅した男は

なぜ、女性たちの心を

捉えることが出来たのか。

百貨店「リバティ」

成功の秘密を探ります。

 

不定期連載『銀のつぶやき』
第71回「氷柱と桜色」

2008/3/22


   数日前は傘を持つ手がかじかむ寒さ。それがきょうは日中、十九度にもなるという。さくら、という声があちこちから聞こえ始めている。三寒四温。昔の人は、うまいことを言う。行きつ戻りつして、やがて、春。

 この季節になると空を見上げる。ピーンと抜けるような切れ味のいい青空が、なんとなくぼんやりとした柔らかみのある青空に。なんだか空で冬と春がケンカをしながら互いに綱引きをしているような。男と女の出会いのような。

 もちろん冬が男で、女が春。水晶のように固く澄み切った氷柱。シャープな断面のなんと魅力的なことか。冬それは男。それに対して、春。やわらく、ふわふわとして、まろやかで、淡い桜色。女だ。まるで違っている。そんな二人が、この季節に出会う。

 分かっているのだ、お互いに。合うわけがないのだ。一緒になったって、うまく行くわけないんだ。でも、もの凄く惹かれる。分かっているんだ、結末は。だけど、事態はどんどん進んでいく。話をする。ケンカをする。時には氷柱が主導権をとり、ときには、桜色が強気に出る。会えばケンカをするのに、会わずには、いられない。

 事態はどんどん進んでいく。回りが見えなくなってくる。電話する。何時間でも飽きずに話す。会う。抱き合う。そして…。

 いま私たちが見ているのは、氷柱と桜色との、熱い恋愛なのだ。二人はまもなく、出会いのピークを迎える。さくらの花。熱烈に燃え上がる二人のピーク。それが、桜の花。

 だから桜の花は、見るのも恥ずかしいほどの華やぎをもって咲き誇り、あっという間に、散る。恋は、はかない。二人の思いの激しさが、桜の花に託される。でも、必ず、散る。運命なのだ。

 合うわけないんだ。わかっているんだ、最初から。なのに押さえられない、この思い。そして、やっぱり、散る。散った後も、桜は美しい。葉桜になり、みずみずしく初夏へと変身していく。

 とするならば、氷柱は、どこに行くのか。男はつらいよな。性懲りもなく旅を続け、四つの季節が巡る頃、ふたたび淡い桜色に出会うのだ。押さえきれずに、流されて、そして一時、燃えてみる。嗚呼。

 三ヶ月ぶりの更新。たまには、こんなお恥ずかしい「つぶやき」も許されるでしょうか。「更新されませんが、おからだでもお悪いんじゃないですか」そんなお言葉を頂いた。

 いえいえ、そんなことは、ありません。なんとなく、ついつい無精が重なって、そんなこんなで三ヶ月。口慣らしに、ちょっと更新してみました。どうやら口は減っていないようですから、またまた、お話を致しましょう。

きょうのお話は、ここまで。

面白いお話、出てこい。
もっと早く、もっとたくさん。

2008/3/22

■講座のご案内

2008年の講座は、これまでになく充実したものとなるはず。当の本人が、大いに乗って準備していますから。どうぞお楽しみに。

いろいろな場所で少しずつ異なるテーマでお話させて頂く機会があります。話の内容は様々ですが、基本テーマは一つです。

「ヨーロッパの食卓の歴史的な変遷を、これまでにない視点から、探訪する。」

歴史の不思議な糸で結ばれた、様々な出来事。銀器という枠を越えて、食卓という世界を通して見えてくる、人々の社会と暮らしの面白さについて、お話ししたいと考えています。

 

詳しくは→こちらへ。