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主婦の友社

「プラスワンリビング」

1月7日発売号

「アンティークシルバー

の思い出」


銀器の歴史に秘められた
人間ドラマを語る連載16回

今回の主人公は
18世紀ロンドン銀器界の

伝統と権威に反抗する形で

バーミンガム銀器の礎を築いた
マシュー・ボルトン

努力家で闘争心あふれる
男の

興味深い生涯をたどります

 

不定期連載『銀のつぶやき』
第88回「いま芝居が面白い」

2008/12/30 

    
まもなく2009年の幕が開きます。

 ここ数年来、積極的にお芝居を観るようになりました。むかし音楽いま芝居って感じです。幸いいま東京は演劇がすごく盛んになってきています。

 その昔お江戸には山ほど寄席があったといいます。それに近い感じになりつつある、と言ったらちょっと大げさでしょうか。でも、たぶん、毎日昼夜ふたつずつ見て歩いても全部見切れないくらい、この広い東京、毎日どこかで出し物が掛かってます。

 音楽も芝居も「生」が一番。体の動き、発声、そして、全身から発するオーラの有無。役者の鼓動が伝わってくる。なんたって生の舞台はゴマカシが効かない。なんだあのオジサン、テレビじゃ売れてるらしいけど、ぜーんぜん声出てないじゃん。セリフに迫力まるでなし。意外だね。ダメなんだねえ、ほんとは。なんて、すぐに見えちゃいます。

 怖いですよ、劇場の観客は。高いお金払って見に行ってますから。映画の何倍もお金使って。それに、わざわざ遠くから電車に乗って時間を掛けて見に来てますから。「見る」という行為に金と時間とエネルギーが注ぎ込まれている。

 家でゴロ寝しながらリモコン押してタダで映る画面を見ている人たちとは、別の人間の集団。それにしても、そんなゴロ寝リモコン組が何を何%見たの見ないのと、まともに数字で分析するなんて、馬鹿げてるって思いませんか。

 芝居好きには、そうしたゴロ寝リモコン組とはまるで異なる情熱がある。見る側に情熱がある。だから、その情熱に応え得るだけの芸がないと、役者として認めない。そう、芝居小屋には今も、観客と役者の勝負がちゃんと存在している。

 もちろん、大劇場で「動員かけて」成り立つ芝居もありますよね。タダ券山ほど企業の宣伝で配ってもらって。電車やテレビで宣伝流すなんてところも、ありますよね。でも、そんなのはむしろ例外的。たいしたスポンサーもなしに、ひたすら劇団員の情熱で持ってる、みたいなところが大半だと感じます。それでも東京では、舞台をやる演劇集団が増えている。これは一体何を意味しているのか。

 かなり重要な時代の流れを象徴している、と思います。

 役者に焦点を合わせれば、ちゃんとした芝居をして、納得できる喝采を求める役者が増えている。その一方で、感動できる演技を見たい観客が増えている。高いお金払ってでも「いい芝居を見たい」という贅沢な観客が増えている。そういうことじゃないでしょうか。実際劇場は中高年の観客が主役です。芝居にもよりますけれど、六対四もしくは七対三で女性です。場合によっては九対一なんてこともありますけれど、男が多いって事は、ないんですよね、哀しいかな。

 それはともかく、お金を持ってる中高年が、人生経験たっぷり持ってる中高年が、芝居を見ている。保守的かもしれないけれど、年齢が高い分当然、要求水準は高くなる。いや、最近の若い連中は、ある意味では、今の中高年より「保守的」かもしれない。冒険できるようなお気楽な経済状況が失われて早くも十八年。特に今年はガクンときたから、これからの数年はもっと、その傾向が強くなるはず。保守的な若者達。なんかね、仕方ないかもしれないけれど。

 久しぶりの更新、前置きのつもりが長くなりすぎました。要は二ヶ月ほど前に初台の新国立で見た『平幹』すなわち平幹二朗さんの演技に圧倒された、というお話をしたかったのです。

 これについては、また回を改めて、ですね。だってきょうはもう、大晦日前日だもの。松飾りは出したし、すす払いも神棚の掃除も終えたところ。あとは西鶴の『世間胸算用』を少し読むのが毎年のならわし。

 あしたの大晦日の夜、我が家は儀式。大昔からご先祖様が食べてきたものと同じものを頂きます。そして除夜の鐘を聞く前に眠りにおちていく。

ではまた来年。

きょうのお話は、ここまで。

面白いお話、出てこい。
もっと早く、もっとたくさん。

2008/12/30

■講座のご案内

 2009年も、様々な場所で少しずつ異なるテーマでお話させて頂く機会があります。また新年3月発売の雑誌で新たに、連載がスタートします。これがちょっと意外な雑誌で、辞書や語学教科書で有名な

大修館書店発行の月刊誌『英語教育』です。

 今も一生懸命準備中です。ありきたりのものにしたくない、そう強く思ってます。目標だけは高く、です。

 いずれにしても、「ヨーロッパの食卓の歴史的な変遷を、これまでにない視点から、探訪する。」が基本です。

 カルチャーでのお話も、連載エッセイも、歴史の不思議な糸で結ばれた、様々な出来事の連なりをたぐり寄せてみたいと思ってます。銀器という枠を越えて、食卓という世界を通して見えてくる、人々の社会と暮らしの面白さについて、お話したい。常にそう考えています。

詳しくは→こちらへ。