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主婦の友社

「プラスワンリビング」

1月7日発売号

「アンティークシルバー

の思い出」


銀器の歴史に秘められた
人間ドラマを語る連載16回

今回の主人公は
18世紀ロンドン銀器界の

伝統と権威に反抗する形で

バーミンガム銀器の礎を築いた
マシュー・ボルトン

努力家で闘争心あふれる
男の

興味深い生涯をたどります

 

不定期連載『銀のつぶやき』
第89回「ララミー牧場」

 

2009/1/4 

    
2009年の幕が開きました。

 元旦の朝、年賀状と一緒に一冊の本が届いた。差出人はワイオミング州ララミー(Laramie)の古本屋さん。えっ、この本屋さんララミーって、あのララミー牧場の? ビックリしてグーグルすると、間違いなかった。

 「ララミー」と聞いて「牧場」と連想するのは、それなりのお年でいらっしゃるはず。私はかすかに覚えている。テレビがモノクロだった時代。アメリカのTV番組が毎日のように放送されていた時代。日本が貧しかった時代。なのに最近多くの日本人が強い郷愁を感じているらしき時代。

 ララミーが人口三万人弱でデンバーのそばだとは、今回初めて知った。デンバーには一度だけ、トランジットで空港に降りたことがある。ネヴァダ山脈の盆地のような場所にあって、信州松本のような感じがしたことを覚えている。それと、今ララミーといえば全米で、テレビ番組ではなく、ある重大事件で有名であるということも初めて知った。

 それにしても最近は、古本サイトの充実で、世界がひとつになっている。本屋さんの場所まで気にして「購入」ボタンを押しているワケじゃないから、時に、今回のように本が届いてビックリすることがある。同じ日にインドのデリーとアイルランドの地の果てみたいな場所から本が届くなんてことも、もはや珍しくない。
 
  一番大笑いだったのは、探していた本が、英国やアメリカの本屋さんに混じって東京のKitazawaという本屋さんにあったときのこと。言うまでもなく神保町の北澤書店だ。少し高かったけれど私は、北澤書店から購入した。それが数日後、国内便で届いた時、なんとも不思議な気がした。もう何年も前のことだ。

 さて、今回届いた本のレシートに手書きで"thanks"という出だしで一筆あって、なんだか嬉しい。「購入」ボタン押してから一週間と数日で届いていて、その早さにも唖然。で、再度グーグルでストリートビューしてみたら、この本屋さんの様子を通り越しに見ることができた。東京に居て、ララミーの本屋の様子を知る。ひょっとして、通りに面して見えるその扉から"thnaks"と手書きして小包作って送ってくれた本屋のオジサンが出てくるんじゃないか、なんて思ったほどだ。
 
  当然これもヒジョウに不思議な気がした。こんなに世界が狭くなってしまって、いいのだろうか。そしてすぐに、思った。いいに決まってると。グーグルのストリートビューについては、プライヴァシーであれこれ問題多発なのは十二分に承知の上で、ひとこと。
 
  もしこのストリートビューで、イラクやアフガン、ガザ地区やソマリアなどなどの地域までのぞけるようになった時、それでも人は、「発射」ボタンを押すことができるのだろうかと。たぶん、ヒジョウに抵抗感を感じるようになるんじゃないだろうか。
 
  だから、グーグルのストリートビューには、人間も映っていた方がいいと思った。少なくとも道を歩いている人として、人間がそこにいる、と認識できる解像度で。男、女、子供、お爺さんにお婆さん。お父さんにお母さん。家族。恋人。学生。小学生に中学生に幼稚園児に会社員。物売りから散歩の人まで。
 
  そんな道行く人々が映っている日常の映像を見た上で、それでも「発射」ボタンを押すというのは、そう簡単にはできないと思う。ちょっと甘いかもしれないけれど、そう、信じたい。人間、不思議なもので、私のような男でも正月ともなれば、こんなことを考えてみたりする。
 
  皆様にとって、この一年が良い年となりますように。

きょうのお話は、ここまで。

面白いお話、出てこい。
もっと早く、もっとたくさん。

2008/1/4

■講座のご案内

 2009年も、様々な場所で少しずつ異なるテーマでお話させて頂く機会があります。また新年3月発売の雑誌で新たに、連載がスタートします。これがちょっと意外な雑誌で、辞書や語学教科書で有名な大修館書店発行の月刊誌『英語教育』です。

 今も一生懸命準備中です。ありきたりのものにしたくない、そう強く思ってます。目標だけは高く、です。

 いずれにしても、「ヨーロッパの食卓の歴史的な変遷を、これまでにない視点から、探訪する。」が基本です。

 カルチャーでのお話も、連載エッセイも、歴史の不思議な糸で結ばれた、様々な出来事の連なりをたぐり寄せてみたいと思ってます。銀器という枠を越えて、食卓という世界を通して見えてくる、人々の社会と暮らしの面白さについて、お話したい。常にそう考えています。

詳しくは→こちらへ。