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主婦の友社

「プラスワンリビング」

5月7日発売号

「アンティークシルバー

の思い出」


銀器の歴史に秘められた
人間ドラマを語る連載12回

今回の主人公は

18世紀末ロンドンで活躍した

女性銀職人

ルイーザ・コートルド

二百年前のロンドンで

女性が銀職人として働くとは

どういうことであったのか

その一端をご紹介しています。

 

不定期連載『銀のつぶやき』
第78回「冷凍切り身魚の秘密」

2008/5/28 

  

 北ヨーロッパではタラ(鱈)がほぼ枯渇したらしい。それももう何年も前の話だ。北米ニューファンドランド沖もとり尽くしたらしい。英国名物のフィッシュ&チップス、タラのフィッシュケーキ、スペインやポルトガルの干鱈、今はどこから持ってきているのだろうか。

 その一方で、ヨーロッパでもアメリカでも魚の消費が着実に上昇している。日本と違うのは、切り身の冷凍が大切な商品だということ。これについて最近、興味深い話を読んだ。今日はそのお話。

 魚を切り身にしてヨーロッパの一般家庭で使えるようにするためには、当然ながら、まず「魚をおろす」必要がある。それぞれの地域でいろいろやり方は違うだろうけれど、例えばイギリスのスーパーを例に考えるなら、魚を切り身にし、できれば皮や小骨も取って、魚料理になじみのない人でも安心して食べられる形にまで仕上げないと、売れない。

 しかし、魚をおろすという作業は、そう簡単ではない。最近は日本人でさえ、魚をおろした経験のない人が大半ではないのか。こうした傾向に対する反動だろう、都心の一部スーパーでは尾頭つきの魚に注力する店が出始めている。もっとも、こうした店でも、その場で頼んで「奥でさばいてもらう」というのであって、持ち帰って自分でさばく、という人は少ない。いずれにしても、「魚をおろす」ことのできる日本人の割合は確実に減ってきているはずだ。

 では、魚の需要が増大しているヨーロッパのスーパーに並ぶ冷凍の切り身、あれは一体「誰がおろしている」のだろうか。ここでビックリするような話を読んだ。

 なんと中国で魚の解体処理から切り身冷凍まで一貫して処理されるケースが急増しているというのだ。

 中国で捕れた魚をヨーロッパに輸出しているのかというと、そうではない。ヨーロッパ資本の船団がヨーロッパやアフリカ、南北アメリカなどで捕った魚を即座に冷凍した上で、これを冷凍コンテナで中国に送る。

 中国ではこれを解凍して、欧米各スーパー及び問屋の意向に従って「おろし」、さらに小骨を取ってカットする。そして、これをスーパーの棚に並ぶ冷凍パックの状態に仕上げて欧州各地に送り出している、というのだ。ヨーロッパと中国の間を冷凍コンテナに揺られたサカナが往復していることになる。

 おそらく、タラ、カレイ&ヒラメ、オヒョウ、それにマグロあたりが中心になりそうな感じだ。それにしても「捕獲→冷凍→解凍→解体おろし作業→真空パッキング→再冷凍→消費者再解凍→調理」という過程を経た魚の味は…まあ、ここでは考えないことにしよう。

 最初この話を読んだときは、半信半疑だった。筆者は英国のジャーナリストで説得力のある文章を書く人だけれど、それにしても、と思ったのだ。そこで、ちょっとネットで調べてみた。

 そしたらビックリ仰天、話は本当だった。「魚のおろし作業と、その冷凍パッケージ商品化」を「売り物」として宣伝している中国の会社が、幾つも存在していることが分かったのだ。

 当然のことながら、どの会社も、中国の沿岸都市にある。日本人にとってはなじみの深い都市が中心だけれど、ここでは敢えて都市の名前は書かないでおこう。
 
  ある会社のホームページでは、様々な冷凍切り身パックが「商品例」として並んでいて、「どんな面倒な要望にも応じます」みたいなことが英語で書かれている。

 また「工場は最新設備で清潔クリーン」と衛生面についても宣伝怠りない。当然だろう。中国の最新設備を誇る魚処理工場に問題など、あるハズがない。清潔な制服に身を包んで作業する様子が紹介されている工場もあった。

 なんだか、しばらく前に日本の新聞雑誌を連日飾っていた、とある中国の食品工場の写真に似ているような気もしたけれど、深く考えるのは止しておこう。どうせ、ヨーロッパに送られるのだから、などと言うのはイケナイことだ。人類皆兄弟なのだから。

 というよりも、今の時代、遠く離れた場所で起きた出来事が、自分の目の前の出来事に直結することが珍しくない。CO2削減を目ざしてバイオ燃料を開発するという「美しい夢」が、日本のスーパーの店頭からバターを消滅させることにつながるなんて、誰が事前に想像できただろうか。

 とそんなことを考えながら中国魚処理工場のホームページを見ているうちに、不安な思いが頭をよぎった。いや、そんなことは、ないハズだと思う。魚の加工は日本人が「世界で一番得意」とするのだから。だから、まさか日本国内に「外国人」がおろした魚が…。

 去年若い連中と一緒にファミレスで魚のフライ定食食べたとき、お料理運んで来たのが中国の子で…あれっ、急にPCの具合がおかしくなってきた。残念だけれど、今日はここまでとするほかない。話はまだ続くのだけれど。

PC変だなあ…。イマ日本人サカナサバカナイヨ、ミナココデサバイテルヨ。トウキョウ? イッタコトアルヨ、アオヤマタノシカタヨ。シンセキ、オオサカ、ハタライテルヨ…。


 ところで、このカタカナも元をたどれば、お隣の国からの賜物である漢字から生まれたもの。稲の栽培も長江(揚子江)流域から古代、我が国に伝えられたのが始まりという学説が近年勢いを得ている(★注)。古い恩義がある。それに七十年ほど昔に大きな迷惑を掛けた分も合わせて、地震の窮状をニュースとして聞くだけでは申し訳ない気がする。

 それにしてもいま、何を語るにしても、お隣の大国を無視できない。魚の切り身の話まで。

(★注)2008/07/07 七夕の今日になって、日本の米ジャポニカイネの起源はインドネシアからフィリピンにかけての東南アジアにあるらしいという遺伝子工学からの研究結果が発表されてニュースになっている。東南アジア→中国長江→日本 ということになるらしい。何でもかんでも中国が起源だと思い込みがちだけれど、ちょっと気をつけよう。仏教だって「中国生まれ」ではなく「中国経由」で朝鮮半島から伝わったわけで、「中国四千年」といわれるとついつい恐れ入ってしまうのは、我々の弱いところかもしれない。

きょうのお話は、ここまで。

面白いお話、出てこい。
もっと早く、もっとたくさん。

2008/5/28

■講座のご案内

2008年の講座は、これまでになく充実したものとなるはず。当の本人が、大いに乗って準備していますから。どうぞお楽しみに。

いろいろな場所で少しずつ異なるテーマでお話させて頂く機会があります。話の内容は様々ですが、基本テーマは一つです。

「ヨーロッパの食卓の歴史的な変遷を、これまでにない視点から、探訪する。」

歴史の不思議な糸で結ばれた、様々な出来事。銀器という枠を越えて、食卓という世界を通して見えてくる、人々の社会と暮らしの面白さについて、お話ししたいと考えています。

 

詳しくは→こちらへ。