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大原千晴

アンティークシルバー物語

主婦の友社

人物中心で語る銀器の歴史

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大修館書店
「英語教育」3月号

食卓の歴史ものがたり

連載第12回

16世紀フェラーラ候家

結婚の宴

 

不定期連載『銀のつぶやき』
第118回「男エスコフィエの魅力」

 

2011/5/4 
 

 子供の頃から聞いていた名前です。でも、どんな人生を歩んだ男なのかなんて、知りませんでした。それが次回グルメ・レクチャーの準備を始めてすぐに、「この男は面白い!」そう感じました。では、その主人公エスコフィエ(1846-1935)とはいったい、何者か。

 「一流シェフ」とてもそんな言葉では収まらない「男の中の男」です。自ら進んで未来を切り開く勇気と積極性。苦労を楽しさに変える機知の豊かさ。友人を大切にする誠意と思いやり。ちょっと出来過ぎじゃないかと思うほどです。南仏の寒村生まれの一フランス人として、普仏戦争では兵役につき、プロシア(ドイツ)軍の捕虜になる。捕虜という厳しい環境にあっても食材確保に走り回り、工夫に工夫を重ねておいしい料理を作って、気の落ち込んだ兵隊仲間を元気づける。もし今、こんな男が福島や三陸の避難所にいたならば、と願いたくなる働きぶりです。

 常に「今何をなすべきか」を本能的に察知して実行する、仕事の鬼です。やがて、セザール・リッツというホテル経営の革命児と出会うことで黄金コンビが誕生。二人はロンドンのサヴォイで大きな成功を収め、新たにパリのリッツで、時代の常識を超えた水準の高級ホテルを生み出します。特に驚くべきは、エスコフィエのマネジメント能力。「最高級ホテルの厨房はかくあるべし」それまでの基準を革命的に変革し、現代に通じる高い基準を打ち出します。彼ほどの傑出した組織力の持ち主ならば、2011年の今日でも、世界の一流ホテルから「総料理長に」というオファーが引きも切らないことでしょう。

 エスコフィエの時代は、ヨーロッパ中に、王様や大公様、公爵や伯爵なんて人たちが数えきれないほど存在していた時代です。この贅沢に飽きるほど我がままな舌の持ち主たちを満足させるのは至難の業。しかし、彼はこれを可能にします。そして「ピーチ・メルバ」に代表されるように、貴族からオペラ歌手まで顧客一人一人の好みを知り尽くしたうえで、「人を喜ばせたい、驚かせたい」一心で、新しい料理を生み出すインテリジェンスも印象的。

 私が子供の頃から家にあった一冊の小さな本。母が「レペルトワール」と呼んでいた、全240ページの小さな書物。ABC順に料理用語と料理法が小さな字でぎっしりと書かれた一種の料理辞典です。実はこの一冊、エスコフィエが1902年に出した、5,000という数の料理を集大成した有名な料理書の縮約版だったと、今回初めて知りました。出版後百年を経ていまだに頼りにされ続ける料理書の執筆は、彼の驚くべき人生の、ほんのひとコマに過ぎません。エスコフィエの人生を知ることは、深みのある人生の生き方を知ることに通じる。いま心から、そう感じています。


  5月29日(日)11:00-13:30 日比谷の帝国ホテル東京「ラ・ブラッスリー」を会場に、エスコフィエの豊かな人生とその料理の秘密についてお話を致します。エスコフィエの孫弟子ともいえる村上信夫シェフの伝統を、若く新鮮な感覚で革新しつつある「ラ・ブラッスリー」のお料理。当日はエスコフィエにちなんだ、特別なメニューをご用意申し上げます。現代に生き続ける偉大な料理人の生き方を知り、その料理の一端に触れる。そんなぜいたくなひとときをお過ごし下さい。

 なお、フランス料理フルコース特別メニューと私の話も付いて、参加費用はお一人様 \10,000- となっております。お問い合わせ・お申し込みは、プティ・セナクル(電話:03-3439-2044)まで、どうぞ。

 

  きょうのお話は、ここまで。

  面白いお話、出てこい。
    もっと早く、もっとたくさん。

2011/5/4

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『アンティークシルバー物語』大原千晴
  主婦の友社     定価 \2,100-

  イラスト:宇野亞喜良、写真:澤崎信孝

  

  

ここには、18人の実在の人物たちの、様々な人生の断面が描かれています。この18人を通して、銀器と食卓の歴史を語る。とてもユニークな一冊です。

本書の大きな魅力は、宇野亞喜良さんの素晴らしいイラストレーションにあります。18枚の肖像画と表紙の帯そしてカトリーヌ・ド・メディシスの1564年の宴席をイメージとして描いて頂いたものが1枚で、計20枚。

私の書いた人物の物語を読んで、宇野亞喜良さんの絵を目にすると、そこに人物の息遣いが聞こえてくるほどです。銀器をとおして過ぎ去った世界に遊んでみる。ひとときの夢をお楽しみ下さい。

2009/11/23

■講座のご案内

 2011年も、様々な場所で少しずつ異なるテーマでお話させて頂く機会があります。

「ヨーロッパの食卓の歴史的な変遷を、これまでにない視点から、探訪する。」が基本です。

 歴史の不思議な糸で結ばれた、様々な出来事の連なりをたぐり寄せてみる。そんな連なりの中から、食卓という世界を通して見えてくる、人々の社会と暮らしの面白さ。これについてお話してみたい。常にそう考えています。

詳しくは→こちらへ。