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主婦の友社

「プラスワンリビング」

3月7日発売号

「アンティークシルバーの思い出」連載第5回


人間を主役に銀器と歴史を語る連載第5回目。フランスロココ銀器を大成した天才的な銀職人の親と、その子の波乱に満ちた人生をたどります。革命直前のフランス銀職人の世界とは。

 

不定期連載『銀のつぶやき』
第54回「桜とウグイス」

                                                2007/4/11


仕事とは別なことでちょっと忙しくなってしまい、このところ更新が停滞。気が付けば既に葉桜。

ほんの一週間ほど前のこと。桜がまだ勢いよく咲いていた頃、店の窓ごしに、いい鳴き声が聞こえてきた。「ホーホケキョ、ケキョ、ケキョ、ホーホケキョ」そう、ウグイスの良く通る鳴き声だ。梅にウグイスとはよく言われるが、ここ青山ではいつだって、桜が咲く頃からしばらく、ウグイスの音色を楽しむことが出来る。

これは私が子供の頃からのことであって、今年もいち早く先週その鳴き声を聞くことが出来たわけで、何も深山幽谷ならずとも、姿は見えねどもウグイスは、ちゃんとどこかからやってきて、ホーホケキョと春を告げる。

果たして根津に棲むやら、墓地に住むやら。これほどの都会でありながら、しかし、ちゃんとウグイスはやってくる。自然を求めて別荘暮らし、そんな発想を私は、一度も考えたことがない。所詮は都会のネズミであって、それでも、都会のネズミにはそれなりに、都会の自然という楽しみもある。

春は突然季節が変わる。冬がある日突然、消えていく。今年は店の周辺で大きな変化が続いている。例えば骨董通り。三月末にざっと数えてみたら、青山6丁目の交差点から7丁目フジ(富士フイルム)前までの間で改装中もしくは店舗入れ替わり中の建物がざっと10軒。その大部分は「店子」だから、それだけ激しい入れ替わりが起きつつある、ということになる。

ファッション関係が中心なのは言うまでもなく、みな新装オープンの時はオシャレなお金の掛かった店舗のはずなのに、短いところは2年と待たずに変わってしまうことも珍しくない。でも、これまでこんなに一度に店の改装・入れ替わりがあるのは記憶にない。

現在、根津美術館は新規建築の準備に入っていて、休館中だ。その根津の向かいにこの20年ほど店舗を構えていた有名なイデーが移転して、その跡地が100円コイン駐車場になった。37台駐車可能という大きなスペースで、弊店にご来店のお客様には、安心してお勧めでる。まさか37全部埋まるということも、めったにないのでは、と思うけれど、こればかりは責任持てませんので、もし満車でしたらお許し下さい。

墓地を降りたところには、話題の新国立美術館。私は子供の頃よく、あの場所で銃の薬莢探しをして遊んだものだ。なぜ、そんなところに銃の薬莢が落ちているのか、それはそれ、一時はそこで拾った薬莢を布でぴかぴかに光らせて学校で見せびらかし合うという馬鹿なことが流行して、気付いた学校側から、危険なので薬莢拾いは厳禁というお触れが出たことを覚えている。そんなところに出来た美術館であるわけで、あの一帯は、ミッドタンから全体、広く軍の公有地だったと言えば、お分かり頂けるだろうか。

オリンピック以前の六本木は…なんて話をするのや止めにしよう。思い出が多すぎて、いつだって、今の姿を見ると泣きたくなる。それに、この一月の間に、よく存じ上げている方がお二人、あちらの世界に旅立たれた。桜の季節は、ときに、こうした変化が続く。

四月、桜、人は新たに何かを始め、何かを終える人もある。それでも花は咲き、ウグイスは鳴き、春の雨は木肌を濡らす。ときには、そんなことを思う雨の日があっても、いい。

 

2007/4/11

■講座のご案内

この春も、いろいろな場所で少しずつ異なるテーマでお話させて頂く機会があります。話の内容は様々ですが、基本テーマは一つです。

「ヨーロッパの食卓の歴史的な変遷を、これまでにない視点から、探訪する。」

歴史の不思議な糸で結ばれた、様々な出来事。銀器という枠を越えて、食卓という世界を通して見えてくる、人々の社会と暮らしの面白さについて、お話ししたいと考えています。

詳しくは→こちらへ。